木桶仕込み、天然醸造。醤遊王国本店で触れる、弓削多醤油のこだわりと挑戦
私たちの食生活に欠かせない存在である、お醤油。
みなさんは普段、どのように選んでいますか?
「特に意識して選んだことがない」という方も多いのではないでしょうか。
一口に「醤油」といっても、実はその種類や製法は様々。
今回は、伝統的な製法で安心安全な醤油づくりを続ける「弓削多醤油株式会社」の醤遊王国本店(埼玉県日高市)を訪れ、お話を伺いました。
今ではよく聞くようになった「生醤油」を日本で初めて作ったのは、実はこの弓削多醤油。
伝統を守るだけでなく、挑戦で未来へ繋いでいく、その姿勢と思いをご紹介します。
【製法のこだわり】100年守り抜く「木桶仕込み」と「天然醸造」の味
醤遊王国本店は、弓削多醤油の醤油づくりを体験・見学できる「醤油のテーマパーク」のような施設。豊かな自然に恵まれた、埼玉県日高市にあります。
弓削多醤油は、この地のお隣の坂戸市で、1923年(大正12年)に創業しました。
建物の前に立つと、ほのかに甘い香りが漂います。普段使う醤油のシャープなイメージとは違い、穏やかで豊かな芳香です。
この豊かな香りの源こそが、100年続く伝統的な製法。弓削多醤油では、昔ながらの「木桶仕込み」と「天然醸造」を守りながら、醤油づくりにおいて「何を使うか(材料)」から「どう作るか(工程)」まで、徹底したこだわりを貫いています。
●安心安全な材料
醤油は、大豆・小麦・塩の3つの材料から作られます。
まず、大豆について。弓削多醤油では国内産の丸大豆を使用しています。国産大豆は、現在日本で流通する大豆の約3%しかない、大変貴重なものです。
さらに、「丸大豆」は大豆を丸ごと使う、ということ。実は、一般に流通している醤油の8割は、薬剤を使って大豆から油分を抜いた「脱脂加工大豆」を使って作られています。
これに対して、弓削多醤油が使う「丸大豆」には、油分が豊富に含まれています。油分は発酵・熟成の過程で甘みのもとになるグリセリンに変化するため、まろやかで深い味わいの醤油になるのです。
また、小麦も国内産で、塩はミネラル豊富な天日塩を使っており、どの材料も安心安全。こだわりの素材だけで作られています。
こうしたこだわりの材料を用いて、醤油づくりは以下のような流れで進みます。
●醤油づくりの工程(弓削多醤油)
1.大豆を蒸し、小麦を炒る
2.大豆と小麦を混ぜ、種麹を加えて約3日かけて麹をつくる
3.麹と塩水を木桶に仕込み、もろみをつくる
4.一年間かけて発酵・熟成させる
5.もろみを風呂敷に包み、醤油を絞り出す
この中で弓削多醤油が特にこだわっているのが、「木桶仕込み」と「天然醸造」です。
●木桶仕込みの魅力
現在、日本の醤油生産のほとんどは金属製やプラスチック製のタンクで行われており、木桶仕込みの醤油は全体のわずか1%程度しかありません。
醤油の味は、蔵に住む微生物によって決まります。しかし、金属製やプラスチック製のタンクには微生物が住めないため、工場で作られた微生物を後から加える必要があります。
一方、木桶仕込みは蔵に住みつく独自の微生物が醤油に作用するため、香りが豊かで、蔵ごとに個性のある味わいになります。
●こだわりの天然醸造
天然醸造とは、冬の寒い時期に仕込み、気温の上昇に合わせて発酵を進め、秋から冬にかけてじっくり熟成させる昔ながらの醸造方法。発酵・熟成に約1年の長い時間がかかります。
一方、仕込み時に塩水を強制的に冷却するなどして発酵を調整し、短期間(4〜6ヶ月)で醤油を仕上げる、「適温醸造」や「速醸」といった方法もあります。
天然醸造は、約1年の長い期間がかかる上、蔵の中は空調を使わないため、夏は暑く、冬は寒い中での作業となり、大変な方法でもあります。しかし、発酵・熟成に長い時間をかけることで旨みがより豊かになるため、弓削多醤油では現在も天然醸造による醤油づくりを続けています。
生しょうゆへの挑戦
●日本で初めてつくった革新の味
弓削多醤油の看板商品である「生(なま)しょうゆ」。近年、大手メーカーも販売を始めメジャーな存在になりましたが、実はこの「生しょうゆ」を日本で初めて世に送り出したのは弓削多醤油でした。
そもそも、醤油における「生」とは「加熱処理をしていない」ということ。一般的な醤油は、もろみを搾ったあとに油分や沈殿物(おり)を取り除き、加熱(火入れ)をして酵母菌や乳酸菌の発酵を止め、保存性を高めています。
これに対して生しょうゆは、この加熱工程を省いています。
ただ、菌が生きたままの状態だと、気温が上がった際に再発酵してガスが発生し、容器の栓が飛ぶリスクがあります。そのため、市販の生しょうゆの多くは菌を濾過して取り除いています。
しかし、弓削多醤油の生しょうゆは、菌を濾過していません。
「生きたままの酵母菌や乳酸菌」が入った状態で、要冷蔵商品として販売することで、フレッシュな風味と有用菌をそのままお届けしています。
要冷蔵のため広くは流通しておらず、醤遊王国や蔵元直送ネットショップで手に入ります。つけ醤油やかけ醤油として一度は味わってみてほしい、知る人ぞ知る名品です。
【体験】醤油の奥深さを知って、味わう。醤遊王国本店の楽しみ方
醤遊王国本店では、弓削多醤油の魅力をさまざまな形で体験できます。
工場見学
醤遊王国本店では、事前予約なしで参加できる工場見学が毎日開催されています。
原料処理室や蔵の内部などを実際に歩いて回り、スタッフの方から丁寧な説明を受けられるため、弓削多醤油のおいしさやこだわりをより深く知ることができます。
参加方法はとても簡単で、工場案内の開始5分前までに1階売店で申し込むだけ。見学はおおよそ1時間ごとに実施されているため、旅行やお買い物のついでに「ちょっと立ち寄って参加できる」という気軽さも魅力です。
醤遊王国を訪れた際には、ぜひ参加してほしい体験です。
※見学時間などの詳細は、最新情報を公式HPにてご確認ください。
2階 展示・体験・軽食コーナー
本店2階では、有機栽培の国産大豆・国産小麦を使用した醤油を仕込む「有機蔵」の様子を見られるコーナーや、しぼり体験(無料)を行える体験コーナー、醤油を使った料理を楽しめる軽食コーナーがあります。
軽食コーナーの名物は、卵かけごはんと醤遊ソフトクリーム。卵かけごはんは、醤遊王国2階でしか買えない「しぼりたて生醤油」をかけて味わうことができます。
醤遊ソフトクリームは「木桶仕込さいしこみしょうゆ」という2年かけて作られた贅沢な味わいの醤油を使用しており、濃厚さと甘じょっぱさがクセになる逸品です。
1階 蔵元直売所
本店1階の直売所では、醤油や味噌、おなめなど、弓削多醤油の自社製品を中心に豊富な商品を取り揃えています。
醤油を使った煎餅やアイス(醤クリーム)、醤油の搾りかすを使用した燻製チップなど、珍しい商品や気になる商品がたくさん。いっぱいお土産を買って帰りたくなります。
【未来へつなぐ】 100年後を見据えた、弓削多醤油の挑戦と想い
現在、醤油の生産量は減少傾向にあり、後継者不足によって蔵の数も減っているとのこと。
その中で弓削多醤油が100年以上続いてきた背景には、製造だけでなく「販売」にも力を入れてきたことがあるといいます。
今回訪れた「醤遊王国」も、その取り組みの一つとして20年前に作られたもの。
蔵などを見学しながら醤油づくりの工程を知ってもらい、軽食コーナーでは醤油ソフトや卵かけご飯で味わってもらう。良いものをつくるだけでなく、それを体験してもらい、知ってもらうきっかけをここでつくってきました。
販売面を強化することは、蔵を続けていくためだけでなく、醤油業界全体を盛り上げたいという思いもあるそうで、最近は「醤遊王国祭」などのイベントを増やしたり、50石(9,000リットル)の木桶づくりに挑戦するなど、新たな試みにも積極的に取り組んでいます。
木桶を使った仕込みや天然醸造といった昔ながらの作り方にこだわり、伝統を守り続ける。
それと同時に、販売に力を入れ、新しい試みにも挑戦していく。
「これからもずっと、100年後も、桶を使った醤油づくりを続けていきたい。」
守り続け、伝え続けるための工夫と挑戦を、弓削多醤油はこれからも続けていくそうです。
【お土産・購入】現地&オンラインで手に入る!弓削多醤油のおすすめ商品
最後に、ちょこたび埼玉オンラインショップや醤遊王国で手に入るおすすめ商品をご紹介します。
●有機しょうゆ
国内産有機大豆と有機小麦を使用し、有機JAS認証も取得。
こだわりの素材を使いたい方からの人気がとても高いそうです。
ちょこたび埼玉オンラインショップでも、有機しょうゆを含むセット商品を販売しています。
●高麗郷 丸大豆しょうゆ
埼玉県産の丸大豆と埼玉県産の小麦を使い、タンク仕込みで作られたお醤油。コスパの良さを重視する方におすすめです。
ちょこたび埼玉オンラインショップでも、有機しょうゆを含むセット商品を販売しています。
●しぼりたて生しょうゆ
醤遊王国本店2階限定で販売されている貴重な商品。その場で搾ったお醤油をそのまま瓶詰めしており、まろやかでフレッシュな味わいです。
川越時の鐘店では「川越しぼり」が販売されていますが、桶に住む微生物が違うため、本店の商品とは味わいが異なるのだとか!
どちらも現地で購入して、食べ比べてみてはいかがでしょうか。
まとめ:伝統をまもる。未来へつなぐ。弓削多醤油のこだわりの醤油を選んでみませんか?
弓削多醤油では、木桶仕込みや天然醸造といった昔ながらの製法を守りながら、見学や体験、イベント等を通して醤油の魅力を伝える取り組みも続けています。
そこには、良いものをつくるだけでなく、それを知ってもらう機会をつくることで、次の世代へつないでいきたいという思いがありました。
醤油づくりの現場を訪れると、普段何気なく使っている醤油の奥深さに気づかされます。せっかく選ぶなら、こだわって作られたものを選びたい。そんな気持ちになれる場所でした。
いつもの一皿に、弓削多醤油の味わいを取り入れてみてはいかがでしょうか?
【DATA】
醤遊王国本店・日高工場
埼玉県日高市田波目804-1
042-985-8011
営業時間:9:00~17:00
休業日:正月休み・臨時休業あり
埼玉県物産観光協会
「埼玉の産業が自然と共生しながら人にも環境にも優しい姿で、
優れた製品・観光・サービスを提供し、発展していく」事を目指します。
住みやすく緑豊かな自然や環境を大切にしながら、
伝統、文化を継承し磨き上げていくとともに、
最先端技術と融合した情報発信地として「SAITAMA BRAND」の
イメージと価値の向上をはかり、
県民が誇れる埼玉県としていきます。